看護師は一般的に「白衣の天使」などと呼ばれ、女の子や学生がなりたい職業の上位にいつもランクインする仕事です。しかし、一方では「夜勤が大変」「離職率が高い」などとも噂され、現実には全国的に看護師不足が叫ばれています。なぜ看護師は離職率が高く人手不足なのでしょうか?ここでは都会と地方の看護師を比較しながらそれぞれが抱えている問題を考えていきたいと思います。
<都会の看護師の現状>
一般的な話ですが、都会の魅力は選択肢の多さと新しいものがあることです。都会には最新の情報があふれ、買い物をするにもたくさんの店が並び、商品も数多く揃っています。都会で働く看護師がおかれている環境もちょうどそんな感じだと言えます。都会では勤務先となる病院や医院も多く、多様な働き方ができます。転職するにしても求人は多いので、看護師の仕事を続ける上では非常に便利な環境にあります。仕事をする上でも、最新の医療機器を持つ都会の大病院は積極的に先端医療を勉強しようという看護師にとっては魅力的な環境です。そういう現場には専門医も多く、看護師としての技能や知識をより高めていく事も可能です。
その一方で都会の病院には患者があふれ、大変忙しいのも事実です。病棟勤務の看護師には夜勤もあり、それが原因で体調を崩す人もいます。仕事内容もハードで「3K」どころか「9K」とまで言われるほどです。せっかく看護師になってもあまりの激務に退職する人が後を絶たず、結局人手不足の状態になっているのです。さらに、一旦仕事を辞めてもまた他に勤め先が見つけやすいことも看護職の離職率を上げる原因となっています。
<地方の看護師の現状>
地方でも看護師が不足していますが、その様相はまるで違っています。2006年に始まったいわゆる「7対1看護」のために、どの病院でも以前より看護師の増員が必要になりました。そこで、有名病院をはじめとする都会の病院は新卒の看護師や地方の中堅看護師を我先にかき集めました。そのため、ただでさえ人手が少ない地方の病院は深刻な人手不足と高齢化に陥ってしまったのです。
看護師が足りないことは安全な医療が提供できないことになります。医師不足では病棟の閉鎖になることはありませんが、看護師不足では病棟の閉鎖もあり得ます。医師は非常勤として掛け持ちでも勤務できますが、看護師はその病院に固定です。どうしても看護師が足りないのであればやむなく病棟を閉鎖することになりますし、果ては病院自体の閉鎖にもつながります。
地方でも特に田舎であれば距離の問題が大きくなります。例えば、ある地方の病院では人工透析を午前午後一回ずつ35人に対して行えるとします。つまり一日では70人の患者に人工透析をしている計算です。もしそれ以上の数の患者が来た場合には他の病院に行ってもらうしかありません。しかし、他の病院へと言われても地方には都会ほど病院はないので場合によっては山を越えることもあります。
地方では、患者だけでなく看護師も病院を選べません。病院が少ない上に、そこまでの距離の遠さは通院・通勤を不便にするだけではなく、看護師の転職も阻みます。看護師の離職率は全体では10数パーセントですが、都道府県別に看護師の離職率を見ると地方は数パーセントとかなり少ないことが分かります。これは、決して地方の病院の居心地がいいわけではなく、どんなに仕事が辛くても我慢してそこに居続けるしかないからなのです。